2024年アメリカ・大統領選はドナルド・トランプ氏の返り咲きで終結する模様です。正式には来年1月に就任するようですが、今回の大統領選はかなりの接戦の予想でしたね。
いざ蓋を開けてみると、早い時期にトランプの当選が確認されましたが、その一つのキャスティングボードは第三党・アメリカ緑の党のジル・スタイン氏であったことは選挙戦期間中からささやかれていました。
緑の党「ジル・エレン・スタイン (Jill Ellen Stein)」氏とは?
ジル・エレン・スタイン(Jill Ellen Stein)氏は、1950年5月14日にアメリカ合衆国イリノイ州シカゴで生まれた医師であり、政治活動家です。
1979年にハーバード大学医学大学院を修了後、内科医として25年間勤務しました。また、ハーバード大学医学大学院で教鞭をとっていたこともあります。
環境問題や社会的公正を重視した政策を提唱しており、特にガザ地区の人道的危機に対する強い批判を行っています。その根源は彼女がユダヤ系アメリカ人であり、家族は改革派ユダヤ教徒であることが強く影響しているようです。
彼女は過去2回、アメリカ緑の党の大統領候補として2012年および2016年の大統領選挙に立候補しました。
2016年の大統領選挙では、彼女の支持率は低かったものの、選挙後には再集計を求める動きがありました。これは、彼女がトランプ氏やヒラリー・クリントン氏に対抗する形で第三の選択肢として注目されたことを示しています。
今回2024年の大統領選挙では、特にアラブ系有権者の間で支持を集める可能性があると注目され、ガザ地区の停戦を訴え、多くの不満を持つ有権者にとって魅力的な候補となっています。
彼女の主に掲げる政策は
- 環境保護と気候変動対策
「グリーン・ニューディール」を支持し、温室効果ガスの排出をゼロにする目標を掲げています。 - 社会的公正と人権
人種的および経済的な不平等を解消するための政策を強調しています。 - 医療制度改革
「メディケア・フォー・オール」を提唱し、全てのアメリカ人に対して公的な医療保険を提供することを目指しています。 - 教育への投資
教育制度の改善と高等教育の無償化を支持しています。 - 経済政策
富裕層への課税強化や、大企業への規制強化を主張し、経済的不平等を是正するための政策を推進しています。 - 外交政策
軍事介入からの撤退や外交的解決策の推進を訴えています。 - 民主主義と選挙制度改革
選挙制度の透明性向上や、有権者登録の簡素化、公正な選挙プロセスの確保を提唱しています。
などで、スタイン氏の政治的立場は、反戦、環境保護、社会的平等を掲げるものであり、これらの問題に対する彼女のアプローチは多くの支持者を集めています。
ジル・スタイン氏が提唱するグリーンニューディールや医療の普遍的アクセスといった政策は、若年層や環境意識の高い有権者に響くでしょう。
特に、彼女は企業の影響を排除し、一般市民の声を政治に反映させることを重視しています。このような姿勢は、進歩的な有権者や若者の間で強い共感を呼び起こし、彼女のキャンペーンにおける重要な要素となっています。
彼女の選挙活動は、従来の二大政党に対する代替案を提供し、多くの有権者に新たな選択肢を提示しました。これにより、彼女は選挙戦において重要な役割を果たしました。
2024アメリカ大統領選挙のキャスティングボードの2つの可能性
1)第3の候補者が脅威になった?!
アメリカの大統領選挙における選挙人団制度は、合衆国憲法に基づく間接選挙の仕組みであり、大統領と副大統領を選出するために使用されます。
11月の第1月曜日の翌日(火曜日)に有権者は投票を行いますが、実際には候補者を支持する各州の人口などに基づいてあらかじめ選出された選挙人に投票しています。
ほとんどの州では「勝者総取り方式」が採用されており、その州で過半数の票を得た候補者がその州の全ての選挙人票を獲得します。(ただし、メイン州とネブラスカ州では比例配分方式が採用されています。)
今回の選挙人の総数は538名、その過半数以上の270名を獲得すれば勝利するということです。
つまり、トランプ氏やハリス氏に直接投票した総数の差で決まるわけでなく、各州の選挙人の人数、例えばフロリダ州は選挙人が30人選出されていますが、フロリダ州の得票が多い政党(候補者)がその30人を獲得(勝者総取り)した、つまりフロリダ州を獲得したということです。
この結果、2016年のヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏との選挙では、ヒラリー氏がトランプ氏より総得票数が300万票ちかく多かったのに、獲得した州の選挙人がトランプ氏のほうが多かったのでヒラリー氏が負けてしまったという現象が起きるのです。
つまり個人の得票数より各州の選挙人団を獲得しないことには勝負にならないということです。
「揺れる州」
今までの流れの中で共和党と民主党が地盤として強い州がそれぞれありますが、それ以外の、両党の間で「swing state(揺れる州)」、いわゆる接戦州や激戦州と呼ばれる一握りの州に今回の選挙は大いに注目されました。
今年は、ペンシルヴェニア(選挙人19人)、ノースカロライナ(同16人)、ジョージア(同16人)、ミシガン(同15人)、アリゾナ(同11人)、ウィスコンシン(同10人)、ネバダ(同6人)の7州が、どちらの候補を支持するか不透明な激戦州とされていました。
そのうちネバダ、アリゾナの未確定2州を除く5州はドナルド・トランプ氏が総どりした結果になりました。(2024.11.7現在)
この「揺れる州」を押さえることが勝利にとって一つの大きなポイントだったわけです。
第3の脅威
アメリカの選挙戦では共和党と民主党の2大政党の選出がメインで、それ以外の第3党についてほとんど報道されることはありません。
しかし今回、共和党と民主党による大接戦選が予想された選挙戦では、その第3党の存在がキャスティングボードを握るということは早い段階で注目されています。
第3党アメリカ緑の党の候補者スタイン氏は、特にアラブ系有権者やイスラム教徒の支持を集めることに注力しており、ミシガン州やアリゾナ州、ウィスコンシン州などの激戦州で支持を得ていると報じられていました。
彼女の出馬は、特にガザ地区での戦争を巡るバイデン政権の対応に対する批判的な有権者の支持を受けているとされています。
スタイン氏は、全米での支持率は約1%程度とされており、これは彼女が「第3の候補」として存在感を示す一方で、主要な候補者に対する影響力が限られていることを示しています。
もしハリス氏がミシガン州(15)、アリゾナ州(11)、ウィスコンシン州(10)に加えてネバダ州(6)を押さえていれば、当選の可能性があったわけです。
アメリカ独自の選挙人団制度により、この揺れる州がスタイン氏の活動により、ハリス氏反対の意向に傾き、結果的にトランプ氏の獲得に傾けた可能性が大いにあると考えられます。
2)過去の選挙での役割
過去3回、第三党が大統領選に影響を及ぼした経緯があります。
2000年、「緑の党」の大統領候補となった社会活動家ラルフ・ネーダーは、わずかな票しか獲得できませんでしたが、アル・ゴアの支持者は、ゴアに必要なリベラル票をネーダーが吸い取ってジョージ・W・ブッシュを当選させてしまったと非難したということがありました。
また、2012年の大統領選挙において、ジル・スタイン氏は緑の党の候補者として出馬し、気候変動や再生可能エネルギーの推進などの環境問題を中心にしたキャンペーンを展開した結果、スタイン氏は約0.36%の票を獲得し、緑の党の存在感を示す重要な機会となりました。
2016年の選挙ではジル・スタイン氏は約1%の票を獲得したに過ぎませんでしたが、特にペンシルベニア州やウィスコンシン州などの接戦州での結果に影響を及ぼし、第三党候補者が選挙においてどのように役割を果たすかについての議論を呼び起こしました。
彼女のメッセージは、環境意識の高い有権者に響き、特に若い世代からの支持を集めたのです。
特筆すべきは、彼女の存在が選挙結果における投票の分散を引き起こし、主要政党の候補者にとっての戦略的な課題を浮き彫りにしたという経緯があったということです。
スタイン氏を含む第3党の影響力は、今後の選挙戦においても無視できない要素となることが予想されます。
メディアと世論の反応
2024年のアメリカ大統領選挙におけるジル・スタイン氏の立候補は、環境問題や社会的公正を重視する立場を取っており、これがメディアの注目を集めています。
世論調査では、彼女の支持率が一定の層において高いことが示されており、これが選挙戦における重要な要素となると予想しました。
TwitterやInstagramなどのソーシャルメディアは、ジル・スタイン氏の立候補に対する意見が活発に交わされる場となっていて、特に若者層からの支持が顕著であり、彼女の環境政策や社会的なメッセージが共鳴しています。
これらソーシャルメディアの影響力は、従来のメディアとは異なる形で彼女のメッセージを広める手段となっているのでしょう。
メディアや世論は、彼女の支持が特定の有権者層にどのように作用するか、またその結果が他の候補者にどのような影響を及ぼすかが注目されています。
このような状況は、選挙戦のダイナミクスを変える可能性があり、スタイン氏の役割がますます重要になっていることを示しています。
今後の展望
選挙後、スタイン氏の影響力がどのように変化するかは、政治的な注目を集めています。彼女の支持基盤は、環境問題に対する関心が高い層で構成されており、選挙結果によってはその影響力が増す可能性があります。
特に、他の候補者が環境政策に対してどのような姿勢を示すかが、彼女の今後の活動に大きな影響を与えるでしょう。
スタイン氏は、選挙後も環境問題に関する具体的な政策提案を持ち続け、それを実現するための運動を展開するでしょう。
これには、草の根運動や市民参加を促進するためのキャンペーンが含まれ、彼女の理念を広めるための重要な手段となります。
スタイン氏の支持者が選挙後にどのような動きを見せるかは、彼女の今後の活動に大きな影響を与える可能性があります。
特に、彼女の支持者がどのように組織化され、政策提案に対する支持を示すかが重要です。これにより、彼女の政治的な影響力が強化されるか、逆に弱まるかが決まるでしょう。
今後、スタイン氏がどのような政治的役割を果たすかは、政治界において注目されています。
また、他の政治家との連携を通じて、より広範な支持を得ることができれば、彼女の影響力はさらに増すでしょう。
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