あなたは小学校の夏休みに朝早く地域ごとに集まってラジオ体操をした覚えはあるでしょうか。
また、毎朝決まった時間に通学、もしくは通勤を余儀なくされ、お昼12:00になったら昼食をとり定時で帰宅するというパターンの繰り返しを当たり前のようにこなしてこなかったでしょうか。
そもそも、学校にしても企業にしても複数の人間を一つの目標のために一律に規制するというこの構図は無理のあることだったのです。
挙句その規制を守れなかった人に対して「だらしがない」とか「不真面目だ」とか「甘えてる」などという批判や判断を下すことは生理学的にみて間違っているという事が、個々の睡眠の在り方を示す【クロノタイプ】が実証しています。
【クロノタイプ】(朝型夜型)とは
【クロノタイプ】とは、人によって異なる自然な睡眠と覚醒のリズムや、一日のうちで最も活動できる時間帯をしめす指標のことです。
人は本来昼行性で昼に活動し夜に休息(睡眠)を取る動物ですが、その就寝と睡眠、覚醒のタイミングはひとり一人少しずつ異なります。
人には生まれながらにして身体リズムである「体内時計」があって、そのなかで24時間周期のものは「サーカディアンリズム」と呼ばれ一日のリズムを司っているのです。
しかしこのサーカディアンリズムは人によって24時間より多少長かったり、短かったりする個体差である【クロノタイプ】が存在するのです。
つまりこのひとり一人がもつ固有の時間的なタイミングの傾向がクロノタイプです。
一般的に朝型や夜型と言われる人をくらべると、体温やメラトニンといった体内時計を反映する機能のタイミングが朝型で早く夜型で遅いことが知られています。
また、夜型の人ほど体内時計が持つ1日の長さ(周期)が長いようです。
【クロノタイプ】は、年齢によって変化すると考えられ、子どもの頃はだいたい朝型、10代後半から20代は夜型に近くなり、60歳前後でまた朝型に移行することが多いと言われています
【クロノタイプ】は「遺伝」と「環境」による相互作用で決まる
普段の生活において睡眠時間に個人差による長短が生じる主な原因は3つです。
- 体質的に決められた必要睡眠量=つまり個々の遺伝子の影響によるもの
- 睡眠ニーズに関わる生活習慣=日常の生活パターンにおける環境の影響によるもの
- 眠りたいという眠気に打ち勝つ覚醒力=意識的に睡眠をコントロールすること
以上の3つの要因によって睡眠時間に個人差があるという事です。
つまり私たちの睡眠時間は、生まれもっての自分では制御できない遺伝子による影響と、生活していく上で必要とされる環境の影響と、自分の意志による睡眠のコントロールの相互作用によって睡眠時間の長短が決定されているのです。
このうち遺伝子の影響による体質的に決められた睡眠(=体温調節、循環、代謝など基本的な生命活動を営むために最低限必要となる休息としての睡眠)を必要睡眠量といい、発達や加齢により緩やかに変化を除けばほとんど恣意的に短期間で変化させることはできないのです。
最近の研究では個人差はこの必要睡眠量であることが分かってきました。
つまり睡眠時間の長短は体質的にかなりの部分が決定され、【クロノタイプ】は個々の遺伝子による影響の差を知るという事に通じるのです。
睡眠時間は50%の遺伝的要因が関係する
様々な国と人種を対象にして睡眠時間に及ぼす遺伝と環境の影響度を比較する調査研究が行われ、その結果、成人の睡眠時間の遺伝率は0.30〜0.50と推定されています。
遺伝率0.5とは、その集団における睡眠時間の分散(ばらつき、個人差)の50%が遺伝的要因で説明できることを意味しているのです。
環境や恣意的な行動による睡眠時間の変化はその人の生活パターンにより決まることなのでそれこそ千差万別ですが、睡眠時間の長短を決める要因の半分は遺伝子による影響だと考えていいのです。
※資料参考:遺伝と環境 「睡眠時間の長さを決めるのはどっち」
3つの【クロノタイプ】
【クロノタイプ】には大きく分けて3つのタイプがあります。
- 朝型(ヒバリ型):朝早く目が覚め午前中に活動的で夜早く眠くなるタイプ
- 夜型(フクロウ型):夜遅くまで活動的で朝起きるのが遅い(苦手)なタイプ
- 中間型:朝型と夜型の中間で日中に活動的になるタイプ
※自分はどのタイプになるのか知りたい方は次のサイトからお調べいただけます。
4つの睡眠覚醒リズムから判断する【クロノタイプ】
臨床心理学者・睡眠医師のマイケルブレウス博士が提唱する4つの動物になぞらえた「動物クロノタイプ」ではより詳しく【クロノタイプ】が分類されています。
マイケル・ブレウス博士の著書
クマ型:昼に活発(55%)
人間の半数はこのタイプです。
概ね太陽の周期と同期した睡眠覚醒パターンです。一般的な人間社会の流れに適応していると言えます。
理想の起床時間は午前7時。昼にかけて最も身体が活性化して高い生産性を発揮できるタイプです。十分な睡眠がとれなかった日に無気力感や眠気に襲われるのもクマ型の特徴です。7~8時間が必要な睡眠時間です。
ライオン型:朝に強い(15~20%)
まさに朝型の典型的で、目覚ましがなくてもいいくらい朝に強いタイプです。
午前中が最も生産的な時間で、夕方遅くになると疲れが出て、夜になると早い時間に眠くなります。
早寝早起きの規則正しい生活は「不安やうつ症状が弱まり、心臓やBMIにも効果的」で健康面でも有利と言われるタイプです。
オオカミ型:夜に動く(15~20%)
夕方から夜にかけて最もパフォーマンスが上がる夜型タイプです。
朝に弱く、起きても午前中はエンジンがかからない反面日が沈むころに高い集中力を発揮できます。
現代の一般的な学校・会社制度のタイムスケジュールには、あまり適していません。睡眠時間は7時間半程度が推奨されます。
イルカ型:短眠でもOK(10%)
睡眠時間が短くてもOKな、いわゆる「ショートスリーパー」な夜型タイプです。
1日中緊張感のある状態が続く傾向にあり、寝つきの悪さや眠りの浅さといった不眠の悩みを抱えがちです。気を抜くとかなりの夜型生活になる点に注意が必要です。
疲労感を感じつつも朝や夜など不特定な時間に集中して仕事することが可能です。
資料参照:「Quesuti クロノタイプ診断」
※あなたがどのタイプか知りたい方はコチラのサイトからお調べいただけます。
まとめ
人間の睡眠と覚醒にそれぞれの【クロノタイプ】があり、ほぼ50%が遺伝によるものということがご理解いただけたでしょうか。
日本では長きにわたって「国民総画一社会」を続けた結果、決められた社会のルールやスケジュールにそぐわない人を団体生活不適合者のように扱う傾向があったことは否めない事と承知されている方も多いと思います。
しかし「朝起きられない」「夜遅くまで起きている」「午前中はぼーっとしている」という状態は体調不良などの原因ではなくその人のごく自然の状態だとしたら、これはその人の個性であると認めるべきだと思います。
例えば「夜型」の遺伝子を受け継ぐ人が、無理に朝型に合わせようとすると心と体のバランスを崩したり、近年の研究では「夜型指向性」がうつ病またはうつ状態のリスク因子となることが示唆されています。
※参考資料:「クロノタイプによる睡眠覚醒パターン、気分調節の特徴」
ひとり一人の個性である【クロノタイプ】に合わせた生活リズムを毎日実行できればいいのですが、人間社会で生活している以上周りの環境や状況がなかなかそうはさせてくれないのが現状という方がほとんどでしょう。
対処としては自分がどの【クロノタイプ】であるかを認識したうえで、思い切って自分に合った生活リズムを実現するか、いままで通りの社会のルールの中で上質な睡眠と快適な覚醒を実現することが大切なポイントですね。
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