2020年日本の女性の地位は世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数によると156か国中120位。
世界と比べると日本の女性の評価は非常に遅れていると言わざるを得ません。
50代の働く女性にとって社会の無意識な偏見(アンコンシャス・バイアス)である「家事・育児・介護は女性、仕事は男性」と言う思い込みは女性自身にも浸透しあきらめてきた一面もあったのではないかと思います。
「人生100年」といわれる昨今、残りの人生50年、つまりあなたの後半期をどう生きていきますか?
50代女性の持つべき無形資産は「稼げる力」です。
50代は社会的にも家庭人として、そして1人の人間としても大きな転換点を迎えようとしています。
社会的立場として企業の中での自分のポジションがおおよそ見えてきて、その後の在り方を考え始める時期ですね。
家庭人としては子育てや住宅ローンなど返済が一段落して、家族の最小単位である夫婦2人の生活が現実化してくる時期でもあります。
人間としても女性なら更年期による体の変調、男性なら生活習慣病などを危惧することが多い年齢でもあります。
人生100年時代と言われる昨今、例えば100歳までの50年間、元気で寿命をまっとうするための万全の備えなどというものはありません。
「老後2,000万円問題」が大きく取り上げられた事がありましたが、2,000万円を蓄えるためにシャカリキになるよりも、ひと月に8万円ちょっと、年間100万円を20年働いて稼ぐという意識にシフトチェンジしたほうが現実的だし健全であると思います。
2,000万円を貯蓄するために毎日の生活を切り詰め残高を気にしながら20年間過ごすより、毎月少しずつ貯めるために働いて稼ぐことを実践すると考えるだけで気持ちが前向きになりますよね。
50代までに得た経験はあなたの貴重な財産であり、特筆すべきは「稼ぐ力」という無形資産を得たという事です。
やっぱり見た目が大事です。
50歳位になると残念ながら見た目をあきらめちゃう人と小まめに手入れをしている人の差が若いとき以上に大きくなります。
もう年だからといって手入れをあきらめて地味に目立たなくてもいいと自分を見捨てないで今の自分の足りないところを上手にカバーしてあげましょう。
老眼ならおしゃれなメガネを、耳が遠くなったら目立たない補聴器を、歯の手入れをして背筋を伸ばしてさっそうと歩くことを心掛けましょう。
美魔女はもちろん、美魔女とまでいかなかったとしても魅力的な女性をヒントに自分を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
再スタートには培った「無形資産」を活かす
今50歳前後で働き続けた女性は1980年代後半に就職した均等法の第一世代ではないでしょうか。
均等法が施行されたといっても日本経済の成長が停滞し、それ以前の昇進、昇給に比べ非常に厳しい時代を過されていると思います。
そんな中で女性はまじめに忍耐強く働いてきたが結果的に「出世」は望めなかったとしても、それは個人の能力が無かったからではなく、いわゆる時の運に恵まれなかっただけなのです。
50歳からの再スタートをする時にはそのような時の運をリセットして考える必要があります。
50歳まで真面目に忍耐強く働いてきたあなたには、いろいろな困難を乗り切った経験、仕事を通じてつながった人脈、長年協力してきた同僚や後輩などとよい人間関係を構築しているなどの「無形資産」がたくさんあるのです、
遮二無二働き続けてきた自分には定年後の生活が思い浮かばないと言う人もいますが、いままで職場で知らず知らずに蓄積された「無形資産」がきっとあなたを助けてくれます。
経済的な余裕があれば、「新しい仕事をすることが楽しいかどうか」「自分が成長できるかどうか」「世の中に役立っているかどうか」という自分基準で次の行動を選ぶことができます。
50代からの情報リテラシーを高める
ここ3年ほどの新型コロナの影響は、いままでにない情報化社会の加速をもたらしました。
ZOOMやTEAMSによる会議、スカイプやLINEなどでの家族や友人との会話、授業やセミナーなどのオンライン配信、オンライン決済などこの環境の変化はここ20年間のなかでも最も著しい進化と浸透率です。
WINDOWS95が世の中に登場した20数年前、それまでの情報形態を大きく変革する予感が一部の人に感じられた時代から比べてもここ数年の意識変革のスピードは50代にとって異常と言ってもいいくらいです。
その波は50代のこれからにとって「ソロバンを電卓に」変えた以上の切替が必要不可欠にさせています。
物品の購入や決済がオンライン化し、情報の入手方法も紙媒体からデジタルに、通信手段もスマホやタブレットが標準化している時代の中でうまく情報を使いこなす能力(情報リテラシー)を持つことが求められます。
情報リテラシーを十分に理解できなければ自分が不利益に見舞われる可能性があるという事です。
とくにSNSやユーチューブなどの膨大な情報の真意を見定め、不必要なトラブルや危険を招かない発信・受信ができる能力を養うことが必要ですね。
50歳からの友人はソフトネットワーク
社会人になって「親友」といえる人に出逢えたでしょうか?
学生時代とか完全に自立していない若いころにできた「互いに心を許し合っている友達」が親友だと言う人がいます。
ちなみに親友には下記のような特徴があるようです。
- 何年も会っていなくても、再会すればいつもの感じに一瞬で戻れる
- お互いの家族にも問題なく紹介できる
- 長時間一緒にいても全くストレスを感じない
- 気負いせず、思ったことは何でも言い合える
- 相手のされて喜ぶこと、嫌がることをハッキリと理解しあっている
- 損得勘定を抜きにして、相手のためになにかしてあげたいと思える
- 会うだけで不思議とエネルギーがチャージできて元気になれる
まさに親や兄弟とは違った緊密な関係の友達であると思いますが、あなたの職場やご近所、取引先や社会人になって出会った人の中でこれらに該当する人を見つけるのは本当に稀有な事だと思いますね。
50歳から出逢うというのは特に難しいですね。
しかし親友とまではいかないまでも縁あって知り合った交友関係はあなたにとって無形の資産です。
頻繁に会う訳ではないけどメールやLINE、ハガキなどでやり取りする程度の付き合いでもいざというときには連絡が取れてちょっとした悩み事を聞いてくれるようなソフトネットワークを作っておくのは大切です。
その友人と思う人のファンになるというのも良い手です。相手のいいところを見つけ感動する心の柔らかさと こちらから挨拶する、声をかける、好意を見せるということでより信頼が深まります。
50歳からの長い人生、ソフトネットワークと言う友だちの繋がりがきっと大きな財産になります。
親との向き合い方
50歳となると親の介護が大きな問題になってきますね。
50歳位の女性は、実の娘のみならず嫁までが介護をするのが当たり前のようにされていた時代に育ってきた方も多いと思います。
すでの介護を実践されている方も多くいらっしゃることかと思いますが、育児と違って介護はいつ介護が始まっていつまで続くかわからないし、だんだん負担が重くなるということです。
ひとそれぞれ事情があって一概には言えませんが、介護は体力も経済も疲弊していきます。
突然の介護でバタつかないように親が健康な時から介護について話し合っておくことが大切です。
会社を退職して自宅で介護に専念すると言うのは、経済的にも精神的にも体力的にもかなりの負担になります。
介護は他人に任せてはいけないと思い込むことは介護される方もする方にも決して良い選択ではありません。
介護サービスを提供する専門家に任せる方がよっぽど介護される人のためになります。
介護はしっかり自分に経済力を持ち良質な情報を集め、よい施設に入居し親の年金で足りない分を補うというように考えたほうが建設的です。
親の介護はいつ始まるかわかりません。そうなったらその時に出来ることをする。それまでは最大限に自分のパワーを高めておき、親の理解と介護の情報を収集することを並行して考えておくことが大切です。
親の介護のために今の仕事を早期退職するという選択はしないということを考えてみてください。
介護はあなた一人で背負うものではなく関わりあうみんなの総合力で進めるべきものです。
自己効力感をより高めて維持すること
「自己効力感」とは目標を達成するための能力を自らが持っていると認識することを指します。
つまりなんらかの目標を達成しようとする際に「自分なら出来る」「きっとうまくいく」と感じることが出来る認知のことです。
社会人として四半世紀以上、困難な仕事を成し遂げたり、多くの苦い失敗を経験したり、いろいろな立場の人間関係を経験してきた50代の女性にとってその経験が自らの自信になっていることでしょう。
自己効力感には3つのタイプがあります。
- 自己統制的自己効力感
自分自身の行動をコントロールすることが出来る自己効力感のことで、今まで経験していないこと前例のない問題でも「自分なら出来る」とポジティブに臨むことが出来ます。
一般的に「自己効力感」とはこの自己統制的自己効力感を指しています。
- 社会的自己効力感
数多い対人関係の経験から社会的な繋がりに前向きになれる自己効力感です。
周りの人が敬遠するような他人とでもポジティブにとらえ良好な関係を構築することが出来、他人の気持ちに寄り添い共感することが出来ます。 - 学業的自己効力感
社会人を例にとると難しい局面を打開した経験とか、仕事を通じて得たスキルとかノウハウを柔軟に自分の資産として積み上げることが出来るということです。
自己効力感を高めるメリット
- 課題に対して前向きな姿勢で取り組める
異業種や異分野の仕事や課題に積極的に取り組めます。
困難な状況に陥っても今までの経験からあきらめずに状況を打破しよう考え、目標を達成する可能性が高まり成果も上げやすくなります。
目標が達成できればさらに自己効力感が高まり好循環サイクルが生まれます。 - 失敗しても立ち直りやすい
「目標は最終的に達成できる」とポジティブに信じているから失敗しても立ち直ることができます。
失敗から学び次に生かそうと思えるから成功の確率が高くなりやすいです。 - モチベーションの高い状態が続けられる
「自分なら出来る」という課題をクリアすれば、「次もクリアしたい」と自分の能力をより高みに向上させようと言う心理が働くので高いモチベーションを持ち続けることが出来ます。
自己効力感を高めるためのおススメの方法
社会経験が長い50代の女性にとって自分の経験から十分推察できると思いますが、あえて4つの方法をご紹介します。
小さな成功経験を積むこと
50代ともなれば大きな目標達成はそんなに経験できることではないし達成できれば得る物も大きいと思いますが、まずは小さな成功体験を積んでモチベーションを高め継続できるような機会を経験しましょう。
小さな成功経験と言ってもあまり簡単な目標を達成しても自己効力感は高められませんので、自分の力量からみてちょっとチャレンジかなあと思われる目標を設定しましょう。
身近なロールモデルを参考に
職場に居ればいやがおうでも身近な先輩や同僚、後輩の成功のプロセスや失敗の原因などを見聞きする機会がありますね。
こんな貴重な観察対象が身近にあるのに漫然と見過ごすのはもったいないです。このロールモデルを参考に代理的体験をしましょう。
疑似体験をする
例えば社会人向けビジネススクールなどの受講などがおススメです。
ビジネススクールの授業の中で特定の企業が実際に直面した状況をもとにその当事者になって分析力や思考力、問題解決などを疑似体験できるトレーニングが出来ます。
セルフマネジメント力を高める
高い自己効力感にはモチベーションの高さといかにその高さをキープするかと言う継続力が求められます。
かといって生身の生身の人間なので精神状態や身体的な好不調の波があるのは当然です。
ここでポイントになるのが「セルフマネジメント能力」です。
セルフマネジメントとは、「目標達成や自己実現のために、自分自身を律し管理すること」です。
まず目標は出来る限り明確に設定すること。漠然とした目標はどうしても集中できないし継続できないからです。
そして大事なのがメンタル面と体調面のケアをすることです。
精神的に追い込まれている時、心配事があるときなどメンタルが落ち込みやすいですし、
寝不足や運動不足などによって体調面に不安があると集中できません。
精神的にも身体的にもフラットな状態を日頃からキープするようなセルフマネジメントが必要ですね。
まとめ
働く女性にとって50歳はまだまだ途中。
昔だったら60歳定年後は老後生活。ひたすらゆっくり穏やかに終焉を迎えるというのが人生のスケールだったのが、いまでは「70歳まで現役」が当たり前。その先30年も人生が続く時代になってきました。
いくつになっても生きている限り自分の能力を高め、知識の向上、スキルやノウハウの習得などの無形資産を積み重ね「稼ぐ力」を継続するよう意識を高めていきましょう。
*参考図書
「人生こんなはずではなかった」「自分ばかりが損をしている」「家事は私ばかり、疲れた」「100年時代といわれてもまだ数十年ある。この先の老後が不安」といった悩みを抱える40-60代に坂東眞理子さんが新しいメッセージを書き下ろされたこの本を参考にさせていただきました。
坂東 眞理子(バンドウマリコ):昭和女子大学総長・理事長。1946年富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府入省。95年埼玉県副知事。98年オーストラリア・ブリスベン総領事。2001年内閣府初代男女共同参画局長を務め03年に退官。04年昭和女子大学教授、同大学女性文化研究所長。07年に同大学学長、14年理事長、16年から現職。
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